10月29日2018年

しばらく物書きをしていると、作業効率があがり、あまり考えずとも比較的整合的な文章がかけるようになってくる。ハイデガーの効用は、経験から来る成熟すらも疑問に呈する思考の習慣を育てることである。ハイデガーに飲み込まれると、雄弁に語るすべての言葉が偽善に聞こえてくる。ハイデガーを忘れると、彼の著述が全く無意味なポエムに聞こえてくる。急進的に納得しない再考の習慣と、答えのない問いに立ち向かい続ける習慣を育てるには、ハイデガーほどの哲学入門はないように思える。あたかも新しい楽器でも始めるように、毎朝ハイデガーを読み解く習慣をつけたら、数年後にはおそらく思考に対する態度が一変していると思う。と、こうして帰結を追求する思考自体をハイデガーは堕落と見ているのだが。

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自己になるという注意散漫。人格と天才の崇拝には思索がない。世界を理解するという注意散漫。事実と科学と時流の崇拝には思索がない。