12月6日2018年

ポップ音楽産業もジャズもない音楽の世界ーー。マンガもイラストもない絵の世界ーー。新書も文庫もない言葉の世界ーー。高度な技巧の持ち主でも人生のすべてをかけて神性のかすかな予感を得るにとどまっていた。

その至高が人のために分かりやすく作られるようになり、新たな人が参加し実験するようになり、至高が一つのジャンルや解釈に堕する。数十年間聴き継ぐ音楽、伝える技巧、読み継ぐ言葉が、その場その場で手に入っては捨てられるようになり、新たな参加者は長年かけて培う技巧をめんどくさいと感じるようになり、まったく研鑽されない自らの「個性」で事足りると感じるようになる。センチメンタリズムはムードと勘違いされるようになり、思いつきは洞察と勘違いされるようになる。人の技巧が作る高く険しい営みが、いかに人の気を引くか、という注意散漫の競争になる。